夕方、パールコンチネンタルと反対の通りの向側にあるセイロン・ジュエリーのお店を訪れました。 いまはもう、息子の代になっています。
このお店は、1965年初めてぼくがカラチに来た時、一等書記官の牧内さんの奥さんが、「奥さんのお土産を買いなさい」といって連れて来てくださったのが最初ですから、大変長い付き合いになります。
あれからもう41年になりますか。ほとんど毎年、多い時には年3回ということもありましたから、ぼくのパキスタン訪問は、30回はくだらないと思われます。
あれはいつだったか、だいぶむかしの話です。
教え子たちを連れてここに来たことがありました。京ちゃんたちは大学の卒業年で、修学旅行のつもりでやって来たようです。
ここを訪れる前に、ぼくは京ちゃんにこういっておきました。
「値切っていくらにしてもらおうかとかは考えるな。欲しい振りをしたら値切れないなどと思うな」
「気に入ったものがあったらほんとに気に入った欲しいと言いなさい」
京ちゃんはそのように振る舞い、そのようにいい、そして「でも私お金がない」といったのです。
おじさんは、しばらく考えてから、「いいよ。もって行きなさい。働いてお金を儲けたら、またやって来てうんと高い石を買ってください」
そんなに安い石ではありませんでしたから、一同ほんとうに驚いたのです。
おじさんは、かなり年老いた感じで椅子に座ったままでしたが、でも元気でニコニコして再会を大喜びしてくれました。
「身体に気をつけて。長生きしてくれる事を祈っています」といって別れました。