たしか5・6年前頃からだったと思うのですが、憲法改正論議が盛んになりました。だからぼくは、<葉巻のけむり>でもいろいろと取り上げました。
プライムニュースで憲法問題が対談シリーズで報道されると、それを文字起こしして<葉巻のけむり>に載せました。そうした流れの中で、大日本帝国憲法を読む必要を感じたのです。
古い国ではその国の慣わしは不文律とし流布されており、特に文章化したものは必要ないわけで、だから文字化された憲法いわゆる憲法典は、例えば英国のようになくてもいいのです。
我が国では、古くは聖徳太子が作った17条憲法があります。大政奉還時に出された天皇が神に誓った五箇条の御誓文も立派な憲法典と言えるでしょう。だから英国よりはるかに古い日本でも憲法典を持つ必要はなかったにもかかわらず、大日本帝国憲法が作られたのには理由がありました。
国体を整える方策を探るために西欧に向かった伊藤博文は、ビスマルクから次のように忠告されます。国際法など勝手に無視され役に立たない。国の法である憲法が必要であると。
その成立の過程、伊藤博文や井上毅がいかに苦労して、日本の独自性を保ちつつ、世界でも先進的な憲法典を作ったかを知るにつけ、ますますその実態を知る必要を感じさせられたわけです。
読んでみると、それは教えられていたようなものではなく、前近代なものでもなく、基本的人権などにも配慮された立派なものであることが分かりました。このことは、みんなに知ってもらう必要があると感じました。
しかし文語体で地の文がカタカナで書かれたそれは読みづらいものでありました。口語訳をネットで調べても冗談半分みたいなものが散見されるばかりでした(現在は、あの頃と異なり、多くの記事や出版物も沢山あります)。そこでこれを現代的なものに書き換えることにした訳です。
これを<高田直樹ウェブサイトへようこそ>に資料として載せたのです。ところがサーバーがクラッシュしたことで、これは失われてしまいました。下書きも見つからず、またあんな苦労をする気にもならなくて、本当にがっくりきました。藁にもすがる気分で、ネットを探したら、ありました。これはいい、これにリンクを張ろう。そう思いながら、最後を見ると、なんと、「高田直樹ウェブサイトより」と書いてあったのです。
なんとそれは、ぼくのサイトからコピペーされたものだったのです。おまけに、このサイトが「完全護憲の会」だったので、少々戸惑いを覚え、苦笑いしたものでした。
なんにしても、ぼくのサイトから消失したものが、保存されていたことは幸運でした。もう一度あんな面倒くさい作業をする気にはならなかったのですから・・・。
大日本帝国憲法現代語版
第1章 天皇(第1条-第17条)
第2章 臣民権利義務(第33条-第54条)
第3章 帝国議会
第4章 国務大臣及枢密顧問(第55条-第56条)
第5章 司法(第57条-第61条)
第6章 会計(第62条-第72条)
第7章 補則(第73条-第76条)
大日本帝国憲法発布勅語
朕は、国家の繁栄と臣民の幸福とを、我が喜びと光栄の光栄の思いとし、朕が祖先から受け継いだ大権によって、現在と将来の臣民に対して、この永遠に滅びることのない大法典を宣布する。
思うに、我が祖先の神々と歴代天皇は、臣民の祖先たちの助けを借りて我が帝国を造り上げ、これを永遠に伝え給うた。
これは、我が神聖なる祖先の威徳、そして臣民が忠実に勇敢に国家を愛し、公に従ったこと、それらによって光り輝ける国家の歴史を遺して来たということである。
朕は、我が臣民は、まさに歴代天皇をよく助けてきた善良な臣民たちの子孫であることにかんがみて、朕の考えをよく理解して、朕の事業を助けるためによく働き臣民同士は心を通わせ協力し合いますます我が帝国の素晴らしいところを海外に広めて祖先たちに遺業を永久に強固なものにして行きたいという希望を、朕と共有し朕とともにこれからの国家の運営に努力して行く覚悟が充分に備わっていることを疑わないのである。
上諭(前文に当たる部分)
朕は、先祖の輝かしい偉業を受け継いで、永遠に一系で続いていく天皇の位を継ぎ、朕の愛する日本臣民は、朕の祖先が大事にしてきた臣民たちの子孫であることを忘れず、臣民たちの安全と幸福を増進して、その臣民たちの優れた美徳と能力をますます発展させることを望む。
そのために、明治14年10月12日に下した国家開設の勅諭を実行し、そしてここに憲法を制定して、朕と将来の天皇、そして臣民と臣民の子孫が永遠にこれに従うべきである事を知らせる。
国家を統治する権利は、朕が先祖から受け継いで子孫に伝えるものである。朕と朕の子孫は、この憲法の決まりに従って統治権を行使するという事に違反してはならない。
朕は臣民の権利と財産の安全を重んじ、これを保護して、この憲法と法律の範囲内で、完全にこれを守り尊重していく事を宣言する。
帝国議会は明治23年に招集し、議会んが開会したと同時にこの憲法も有効となる。もし将来この憲法の条項を変更する必要が出てきた場合は、朕が朕の子孫は発議権を発動して議会に命じ、議会がこの憲法で決められた手順に沿ってその内容を変更する。朕と朕の子孫そして臣民は、それ以外の方法でこの憲法をみだりに変更する事はしてはならない。
国務大臣は、朕のため憲法施行の責任を負い、臣民と臣民の子孫は、永遠にこの憲法に従う義務を負いなさい。
第1条
大日本帝国は、永遠に一つの系統を継承していく万世一系の天皇が統治する。
第2条
天皇の御位は皇室典範の決まりに従って、皇室の血を受け継げる男子が継いで行く。
第3条
天皇は神聖だから非難したりしてはならない。天皇は政治をはじめ一切の事の責任を負わないし天皇をやめさせることもできない。
第4条
天皇は日本の元首で日本を治める権利を持ち、憲法の決まりに従って日本を治める。
第5条
天皇は議会の協力と賛成をもらって法律を制定する。
第6条
天皇は議会が作った法律に判子を押して、世の中に広めてその法律を守らせるよう命令する。
第7条
天皇は国会議員を集めて、議会を始めさせたり、終わらせたり、中断させたり、衆議院を解散させたりする。
第8条
天皇は世の中の安全を保ったり、非常事態を避けたりしなければならない緊急の時に、もし国会が閉会していたりしたら、法律の代りに勅令を出せる。
第8条2項
勅令は、次に議会が始まったら、その勅令を残すか取り消すか話し合わないといけない。取り消すことになったら勅令は無効になり、政府はこのことを国民に知らせなければならない。
第9条
天皇は法律を実際に運用したり、世の中の安定や秩序を守ったり、臣民をもっと幸せにするために、必要な命令を出したり、出させたりすることができる。ただし、命令では法律を変えることはできない。
(内閣と省庁が出す命令は、この天皇の権利の委任である)
第10条
天皇は行政機関の制度とか、大臣とか公務員や軍人の給料を決めたり、それらを任命したりやめさせたりする。ただし、憲法や法律でなにか特例があるときはその条項による。
第11条
天皇は陸軍と海軍を率いる。
第12条
天皇は陸海軍の編成や予算とかを定める。
第13条
天皇は外国に宣戦布告したり、講和したり、条約を結んだりする。
第14条
天皇は非常事態の時、戒厳(臣民の権利を制限する)を宣言する。戒厳の要件や効力は法律で定める。
第15条
天皇は爵位とか勲章とか栄典とか、その他の名誉を与える。
第16条
天皇は受刑者に恩赦を与えて減刑したり復権の命令を出す。
第17条
天皇の代理人の摂政を置くときは皇室典範の決まりにしたがう。摂政は天皇の代理として権限を行使する。
第18条
日本臣民であることの基準は法律で定める。
第19条
日本臣民は法律・命令で決まった資格を満たせば誰でも平等に公務員とか軍人になれるし、その仕事ができる。
第20条
日本臣民は法律の決まりにしたがって、一定期間軍人にならなければならない。
第21条
日本臣民は法律の決まりにしたがって税金を納めないといけない。
第22条
日本臣民は法律に違反しない範囲でならどこに住んでもよいし、移転も自由である。
第23条
日本臣民は法律に違反しない限り、逮捕・監禁・審問・処罰されることはない。
第24条
日本臣民は法律に決められた裁判官による裁判を受ける権利を奪われることはない。
第25条
日本臣民は法律に定めた場合を除いて許可なく家に入られたり、捜索されたりしない。
第26条
日本臣民は法律で定めた場合を除いて勝手に外信書(手紙など)の秘密を侵されることはない。
第27条
日本臣民は所有権(自分の財産など)を奪われることはない。
2項 公共の利益のためにどうしようもないときは法律で決まったことに従う。
第28条
日本臣民は社会に迷惑をかけず、臣民の義務を果たしてさえいればどんな宗教を信じても自由である。
第29条
日本臣民は法律に違反しない範囲でなら、(言論・著作・印行・集会及結社の自由を有す)何を言っても、何を書いても、どんな本を発行しても、みんなで集まったり、何かしらの団体を組織したりしてもよい。
第30条
日本臣民は礼儀正しく、決められた手順を踏めば国に請願(お願いごと)をすることができる。
第31条
この章の決まりごとは、戦争中や国家の非常事態の時には天皇の権力行使の邪魔をすることはない。
第32条
この章の決まりごとは、陸軍海軍に関する法律や規律に触れないことなら軍人にも適用される。
第33条
議会には衆議院と貴族院をおく。
第34条
貴族院は貴族院令で決められた皇族・華族と天皇に任命された議員で組織する。
第35条
衆議院は選挙で選ばれた議員で組織する。
第36条
同時に両方の議院の議員にはなれない。
第37条
全ての法律は議会の賛成がないと決めることはできない。
第38条
両議院は政府が提案した法律案に賛成するか話し合ったり法律案を提案したりできる。
第39条
どっちかの議院で否決された法律はどう会期中にはは再提出できない。
第40条
両議院は法律やその他の件について政府に意見や希望を述べることはできる。ただし政府がそれを取り上げなかった場合、どう会期中に再度の試みることはできない。
第41条
国会は毎年開く
第42条
議会は3ヶ月の会期である。必要なときは勅命で延長できる。
第43条
臨時緊急の必要あるときは臨時会を開くことができる。
2項 臨時会の会期は勅命で定める。
第44条
議会の開会、閉会、会期の延長、あるいは停会は、両院同時に行わないといけない。
2項 衆議院が解散したら貴族院も一旦中止する。
第45条
衆議院が解散したら勅命で新しい議員を選挙し5ヶ月以内に招集すべし。
第46条
議員が3分の1以上出席していないと議会は開けないし議決もできない。
第47条
両議院の議事は過半数で可決、同数のときは議長が決める。
第48条
両議員の会議は公開しないといけない。ただし政府が要求したり、議会で決議した場合は秘密会とすることもできる。
第49条
両議院はそれぞれ天皇に意見を伝えたり、報告することができる。
第50条
両議院は臣民が提出した請願書を受け取ることができる。
第51条
両議院は、権謀や議院法で決められていない議会の運営に必要な諸規則を決めることができる。
第52条
議員は、議会の中で何をいいどんな評決をしてもそれに責任を問われることはない。ただし、議会の外で演説したり執筆して表明したことについては自分の責任となる。
第53条
議員は現行犯とか、内乱を起こそうとしたとか、外国による侵略に加担するとかした時以外は、会期中に議院の許可なく逮捕されない。
第54条
国務大臣と政府委員はいつでも議会に出席して発言できる。
第4章 国務大臣及枢密顧問
第55条
国務各大臣は天皇を助け手伝って実務を行いその責任を負う。天皇は責任を負わない。全ての法律、勅令、国務に関する詔勅は大臣の署名が必要。
第56条
枢密顧問は枢密院管制の決まりにしたがって、天皇の質問に答え、重要な国の事柄について審議する。
第5章 司法
第57条
裁判など司法に関することは、天皇の名の下に法律に従って裁判所が行う。
2項 裁判所の構成は法律で定める。
第58条
裁判官は法律で定める資格を持ったものが任命される。
2項 裁判官は法律を犯して実刑が決まったり、懲戒処分を受けない限り辞めさせられない。
3項 懲戒に関する決まりは法律で定める。
第59条
裁判とその判決は公開すること。ただし安寧秩序又は風俗を害するおそれがあるときは、法律によってもしくは裁判所の決議によって裁判を非公開にできる。(しかし、判決は公開する)
第60条
普通の裁判所とは別に、特別に裁判所を設置した方がいい場合には法律で決める。
第61条
行政官庁に違法に権利を侵害されたとする訴訟で、別に法律で定めた特別な行政裁判所で裁判できるものは、通常の司法裁判所で行わなくてもよい。
第6章 会計
第62条
新しく税金を取ったり、税額を変更したりする場合は法律でこれを決める。
2項 ただし、役所の手数料、鉄道の切符代、学校の授業料などは決めなくてよい。
3項 国債などや予算で定めたもの以外の国庫の負担となるものには議会の許可が必要である。
第63条
現行の税金に関しては、法律の変更がない限り、そのまま続行徴収を行う。
第64条
国家の歳出歳入は、毎年の予算として議会の許可を必要とする。
2項 予算が超過したり、予算以外の支出があったときは後日議会の承諾を得る必要がある。
第65条
予算はまず衆議院に提出する。
第66条
皇室の経費は定額を毎年国庫から支出し、増額を要する時以外は議会の承認は必要でない。
第67条
第一章の天皇の権限に関する予算と、政府の義務であることに関する予算は政府の許可がないと変更することはできない。
第68条
政府は特別に必要な場合には、何年かにわたって継続する予算を求めることができる。
第69条
予想外の支出に当てるため、または予算オーバーの場合(64条)には予備費を設ける。
第70条
社会の安全を保つためどうしても必要で、しかも議会を開くことができない場合には、勅命で財政に関することを決めることができる。
2項 この場合次の議会が始まった時に承諾を得る必要がある。
第71条
議会が予算に関して議決が得られず、又は承諾が得られなかった場合は、前年度の予算を執行する。
第72条
国家の歳出歳入の決算は、会計監査員が検査した後、検査報告と一緒に議会に提出する。
2項 会計検査院の組織や職権については法律で定める。
第7章 補則
第73条
将来この憲法の条項を改正する必要があるときは、勅命で議案を提出する。
2項 この場合、議席の3分の2以上の出席がないと審議できない。出席議員んお3分の2以上の賛成がないと改正できない。
第74条
皇室典範を変更する場合は議会の賛成を得る必要はない。(皇室典範の改正に関しては皇室会議と枢密院顧問で決める)
2項 皇室典範の内容によって憲法を変更することはできない。
第75条
憲法と皇室典範は、摂政が置かれている間は変更できない。
第76条
現行の法律規則命令は、この憲法と矛盾しない限りその効力を失わない。
2項 歳出に関して、政府の義務にかかわる契約や命令は第67条に定めた通りである。.
高田直樹ウェブサイトより