PC-98LT
日本の歴史的コンピュータ
googleで「PC98LT」を検索すると、かつてあった【日本の歴史的コンピュータ】 と言う項はなくなっているが、 と言う項はなくなっているが、パソコン博物館で詳細を見ることができる。
この日本初のラップトップコンピュータ、PC-98LTは1986年10月に発売された。
前稿「ぼくの夢のパソコン」(『Oh!PC』誌1985年新年号)の「パソコンが作家になる日」でも書いているように、アウトドアで使えるパソコンを待ち望んでいた私は、即購入し実際にテストするべく、同じ年1986年の暮れからネパールに飛んだ。
ポカラのサランコットの丘(1592m)に馬で登り、この小山の上でラップトップを使ってみた。
今日では、むしろ主流となったラップトップパソコンの屋外使用および1592mの高所での歴史的使用記録といえるだろう。
帰国して、BBSにアクセスしてみると(当時は、インターネットはなくBBSが意見交換の場だった)このLTが大いに話題になっていた。
海外に持ち出せるだろうか?セキュリティーチェックのX線の被害は?税関で課税されないか等など。
「年末から年始にかけて、ネパールに行って使ってきましたよ」と、私は書いた。
すぐにメールが来て、『日経パソコン』ですが、取材に行きたい。翌日には、東京から斉藤記者が来宅した。
そしてこの『日経パソコン』に載ったのが次の記事である。
その後、私自身は、このLTにPASCAL言語をインストールし、メモソフト「メモランダム」(株式会社ソフトバンク刊)の開発やパスカル言語関係の著書の執筆に使用した。
—-日経パソコン1987年2月23日 特集「ラップトップ型パソコン活用法」
アウトドアでラップトップを使う
ラップトップ型パソコンの利用例として,一番最初に頭に浮かんでくるのは,出かける先に持っていくこと。これこそ,ハンドヘルド以来の携帯パソコンの“正統的”な使い方だといえる。出張や旅行などの移動中に,また出かけた先で,ワープロで文書を作成したり,表計算ソフトを使って旅費の精算に使うなどが最も一般的な使い方だ。
高田直樹さん(50歳)の場合は,そんなラップトップユーザーの代表的な例だ。高田さんは,京都府の高校で化学の教師をしているが,登山家としてもかなり名を知られた存在だ。大学時代から本格的に登山を始め,カラコルムのラトックIなどを踏破した。
今では,「4年前から始めたパソコンに夢中で,少し山から遠ざかっている」(高田夫人)。それでも昨年の暮れ,友人から誘われてネパールに出かけた。もちろん,愛用のPC−98LTを携帯した。ネパールでは,「サスケを使って,おもに日記をつけたり,メモ代わりとしてLTを使っていました。時には,パスカルで遊んだりもしました。おそらく最も高い地点でLTを使用した記録でしょう」と高田さんは語る。このあたりの事情は,日経マグロウヒル社が主催している電子会議,日経MIXのラップトップ会議に高田さん自身がレポートしている。
もっとも「ラップトップ」らしい使い方は「いつでもどこでも文書を作ったりシミュレーションができる」というものだろう。この目的のためにはAC電源を必要としないで使えることと,軽く,小さく,かさばらず携帯性がいいことが極めて重要なポイントになってくる。仕事の中でパソコンを使う比重が高まってパソコンが使えない「空白帯」が極めてまずいものになってくる。当然電車の中でも,喫茶店でも使えなくてはならない。まわりの視線など問題ではないのだ。
表計算ソフトを使うというのであれば画面が大きく,PC−98LTのようにソフトもそれなりに揃っていなければいけないし,オフィスのパソコンとデータを共有するためにフロッピーディスクもあったほうがいい。
自宅では,セカンドマシンとしてLTを使用している高田さんの書斎にはLTのほかにPC・9800VMとPC−9800Eがある。VMには,ハードディスク,8インチと3.5インチのフロッピーディスク装置が接続されている。ここで高田さんは,よく自分でプログラミングをする。生徒の成績管理ソフトぐらいは朝飯前で,時には商店の顧客管理を頼まれて作ってしまうほどだ。プログラミング作業はおもにVMを利用するが,その途中で「パソコン通信をしたくなったときは,それこそ膝の上にのせて使います。気分を変えて,ほかの部屋でパソコンを使うのも簡単」(高田さん)という。
登山やパソコンのほかに,バイクに乗るのも趣味という高田さん。毎日学校まで900ccの大型バイクで通勤している。「バイクの後ろにPC・98LTを積んで,ゴムで留めて持っていきます。振動にも強いようですよ」と笑う。
多趣味なために,「風呂にはいっているとき以外は,常に複数のことをしている」「PC・98LTをトイレに持ち込むのも時間の問題」と高田夫人は心配するが,本人は「今はLTを使うのが楽しくてしょうがない」そうだ。「アウトドアで使うというのが,僕のコンピューターの利用テーマの一つでした」という高田さんは,「電池で動かないのは,ラップトップとはいえない。屋外でないにしても簡単に持っていって使えることが最低の条件」とラップトップ型パソコンを定義する。