文部省登山研修所が、研修生の教育のために作った16mm映画です。1973年の夏に基礎編、1974年の夏に応用編の撮影がいずれも劔岳のロケで制作されました。
登山研修所は富山県立山の麓、千寿ヶ原に1967年に設立された文部省の施設です。大学山岳部リーダー、社会人山岳団体の指導者や高校山岳部の顧問を対象に登山の研修を行うためのものです。
この施設の専門員となった南極越冬隊帰りの佐伯富夫氏の要請で、ぼくは第一回の大学山岳部リーダー研修から始まって永くインストラクターを務めました。
もともとぼくは、この映画の基礎編だけに出演するはずだったのですが、なぜか応用編にも出て下さいと言われ、エベレスト南壁から帰ってきたばかりの重廣恒夫氏と組んでチンネを攀ることになりました。
後で分かったことなのですが、基礎編のラッシュを見た山の大御所、槙有恒氏が「この人の登りは素晴らしい。応用編にもこの人を使って下さい」という鶴の一声で、ぼくの再出演が決まったのだそうです。その結果、外された人はきっと怒ったのだと思います(それが誰だったかは、その後なんとなく分かったのですが)。
その後1979年に、ぼくは重廣君にラトック1峰攻略を持ちかけ、一緒にこの難峰に向かうことになりました。