ドバイのスキー


10月13日
目覚めて、時計を見ると10時20分。
10時30分までの朝食には間に合わない、と思ったのですが、考えてみるとここはドバイで、パキスタンとは時差1時間です。ドバイ時間9時20分、朝食には充分の時間がありました。
最上階の5階のこじんまりしたレストランで、朝食のビュッフェを取りました。
このHoliday Innは、純ヨーロッパスタイルのホテルで、こじんまりしてなかなか快適です。

ドバイの通貨は、ディルハムでDHSと書きます。レートは1$=3.48DHSだそうで、1ディルハムは、大体35円くらいになります。
いちいち35を掛けるのは面倒なので、ドル円レートをインターネットで調べて、パームのシェアウェアAscalに、y=x/3.48*119という数式を打ち込み、ディルハム・円の換算ソフトを作りました。

ゆっくりと部屋でくつろいで、午後2時に外に出ることにしました。
出かける先は、迷う事なくドバイ・スキーです。
ここに来るときのこと。カラチ空港の飛行機待ちで二階の奥まったところにある喫煙コーナーで葉巻を吸っていると、一人の40才がらみのパキスタンビジネスマンと思われる男性が煙草を吸いにやってきました。
「どこへ行きますか」とぼくから話しかけました。
彼は、バンクーバー在住のパキスタン人で、これからドバイ経由でロンドン、ロンドンからバンクーバーに向かうそうで、なんと32時間かかるそうです。

ぼくがドバイでレンタカーを借りようかと思ってるんだけどというと、それは止めた方がいい、と即座に彼は答えました。
「はいはい、その理由はですねえ」
私は、6年間ドバイで暮らしましたが、自分で運転した事はほとんどありませんでした。タクシーは高くないし、どこでも拾えるしどこからでも呼べます。今はラマザーンで渋滞が特にひどいです。
「そうですか。レンタカーは止めます。他に何かアドバイスがありますか」
心配する事は何もないです。タクシーは全部メーターだし、チップもいりません。
ああ、ドバイ・スキーですね。もうオープンしてますよ。たぶん昨年だった思います。きっと楽しめるでしょう。
滑れる。砂漠の国でスキーが出来る。ぼくは欣喜雀躍の思いだったのです。

ページボーイにタクシーを呼んでもらい、ドバイ・スキーに向かいました。
ドバイ・スキーと呼ぶ人口スキー場は、モール・オブ・エミレイツのなかにあり、エミレイツ・ホテルとも接しています。
人口スキー場部分は、遠くから見ると、まるで巨大なマッコウクジラが首をもたげているように見えました。

タクシードライバーが、ここですと車を止めたところは、大きなホテルの入り口でした。どう見ても人口スキー場の入り口とは思えません。
中に入ると右側に数十メートルにわたって、黒いカーテンが天井から下がっています。時々人がその隙間から出入りしています。
隙間から中をのぞくと、これが広大なファミレス様の食事スペースでした。ラマザーンなので、こんな風に黒布で囲ってあるのです。

DSC00235.jpgスキーの前に食事をとっておくべきだと考え、後でここに取って返して、飲茶3品を取りました。
洋食和食中華なんでもあって、にぎりから天ぷら幕の内弁当までありました。ほんとに驚きました。そして注文したディムサムは、充分に美味だったのです。

DSC00231.jpg奥に進むとショッピングモールとなり、そして切符売り場が現れます。切符売り場は、スキースクール、スノーパーク、スキースロープと窓口が並んでいます。

DSC00232.jpgスキースロープの売り場のお兄さんに説明を頼みました。
「スキーの経験はありますか」と聞いてから、彼は説明しました。
2時間が一応基本で、用具一式のレンタル料込みで、145ドルという話。1時間1万円近いではないか。

DSC00228.jpg最長400mのコースを含む5本のコースを持ち、これを終始マイナス8℃に保つためにはそんなに高い金を取る必要があるのかなあ。せっかくきたのだから、高くてもしゃあないとしよう。
そう思って、結構納得して滑っていたのですが、帰りにICチップのカードの払い戻しをして、自動返却機から10ディルハム札が出てきた時、ディルハムとダラーの聞き間違いに気付きました。
ディルハムは、どうしてもダラーと聞こえてしまうのです。パキスタンでは、少し大きい金額はUSダラーで云うことが多いので、なお聞き間違えてしまったのでしょう。
ディルハムとダラーとでは大違い。正しくは2時間で5000円ほどとなります。

DSC00233.jpg云われた通り、隣のスポーツショップで、帽子と手袋を買います。これが2800円。

DSC00234.jpg貸しウエアーのコーナーでズボンと上着を受け取ります。次のコーナーで靴を受け取る。靴を持ってスキーのコーナーに行きます。好きな長さのスキーを出してくれ、バッケンを調節してくれます。

DSC00229.jpg少し歩いてエスカレータで上るとガラスの自動ドアの外は一面の銀世界。クアッドリフトが動いています。大きなショッピングモールの一階上は、雪山という感じでなんだか不思議の国のアリス。

今年1月の16日、イタリアのリモーネ・ピエモンテのスキー場で両脚のヒラメ筋を伸ばす事故をしてから、ほぼ9ヶ月ぶりのスキーです。痛みや腫れが引くのに7ヶ月もかかりました。この間接骨医に約1ヶ月通いましたが、全くといっていいほどなんのリハビリもしていません。
正直言って結構スキー滑走には不安があったのです。
でも、なんの問題もなく滑れました。我ながら驚いた次第。結構スムーズにスピードも出せましたし。きっとぼくのスキーはそれほど自然で、無駄な力を使わない走法だと云う事なのでしょう。

DSC00241.jpgそれにしてもこの人口スキー場、鉄骨を組んで、急なところでは雪が滑り落ちないように階段状にした人口の斜面であることなど全く感じさせない、自然の斜面のようで、なんの違和感もなく滑走が楽しめました。
これが砂漠の真ん中だとは、ほんとに驚きでした。
スキーにワックスをかけたい感じがしたのですが、滑り始めるとけっこうよくすべりました。きっと雪の質がいいのでしょう。天然の雪は気温や湿度などの変化によって融解凍結昇華などを繰り返していますから、雪質の変化が激しい。
この人口スキー場では、気温はつねにマイナス8℃、湿度も一定ですから、雪の状態もきっといいのでしょう。

ただ一カ所、照明のせいで二本の薄い陰が斜面を横に走っているところがあり、そこがどうしてもギャップに見えてしまい、瞬間的にひどく緊張してしまいます。
何回すべってもそうなので、これはきっとあのリモーネ・ピエモンテでギャップを飛んで、怪我をしたのがトラウマになっているのだと思った事でした。

もう一つ感心したのは、貸し靴貸スキーの質の良さです。10数年前、友人のパベルに誘われて、スイス・フランスの国境のスキー場に行った時、貸しスキーがひどいペラペラスキーで、ぼくはまるで初心者のようにスッテンコロリンを繰り返しました。以後貸し靴貸スキーには、ひどい偏見を持ってしまい、外国で滑るときも自前の靴とスキーを使うことに決めていました。
今回は、よんどころなく借りたのですが、靴はまるで自分のもののようにビッタリでしたし、180cmのスキーもしっかりしたものでした。
時間さえあれば、何回も楽しみにきたいと思ったほどです。

砂漠の中のスキー場、ドバイにはとんでもない事を考える連中がいるもんだ、そう思った事でした。

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