ちょうど今の時期、プラハ城では、カレル王の王冠が開帳展示されているから、それを見に行ったらどうかとパベルが言い出した。レストランで夜の食事をしている時である。
50年から100年に一回という展示で、チェコ中の人が押し掛け、それに世界からの観光客が加わるからとんでもない行列になる。最低5時間は並ばないと中に入れない。「どうだいナオキ。並ぶかい」
その顔は、並ぶわけないよなあ、といっている。ぼくは、その意を受けて「いやだね」といった。
王冠と王杖と王玉の三種だそうで、これは7つの鍵の掛かった部屋に仕舞われているそうである。その鍵を保管する7人が順番に鍵をあけ、ようやくその保管室の扉が開くのだそうである。
そんなのは、日本にもあって三種の神噐というんだと、ぼくは説明する。
「ところで、その王冠が入っている部屋の扉を7人が開けたら、フロアはビカピカだったんだって。どうしてほこりが積もってないのかなあ。きっと掃除のおばさんが毎日掃除してるんだよ」とパベルは冗談を言った。
これは、※パベルが教えてくれたサイト※。
チェコ語のサイトなのでまったく読めないけれど、最下段に動画があって、そこでは7人が順番に鍵を開けている様子を見ることができる。
ところが、あとでネットで調べたら、たしかにプラハ城の王冠展示は19日から29日まで行われている、50年に一回というのは、パベルの間違いか誇張のようである。
記事によるとこの100年で10回は開帳されている。
翌日、プラハ城を見学した。パベルのボルボで城の裏門に着いた。こちらからの方が近いという。
王冠の展示館には、なるほど長蛇の列が出来ているようであった。その一部を写真に撮った。
ぼくは、プラハは4回目。一回くらいはプラハ城に行かなかった時もあると思うけれど、決して初めてではない。
でも、なんだか初めてのように新鮮な感じで見て回ることが出来た。
衛兵の行列行進は始めでだった。
カフカの家も見た。でもなんでカフカがこんな城内に住んでいたのだろうと思った。
一番印象に残ったのは、地下の拷問室で、たぶんそこに降りたのは、きっと初めてだったのではないかと思う。うまく言い表せない恐怖の感情を憶えた。その数々の鉄製の拷問用器具の精密さに感心しながらも恐怖の感情は増幅させられた。
途中からパベルは、オークションが始まるからといって、一行と別れた。年に一回行われるオークションで、お母さんに頼まれた絵と彫刻を落とすのだそうである。後で合流した時に聞いたら、どちらも競り負けたそうである。
世界最古と言われるカレル橋の直ぐ近くのレストランの水辺のテーブルで食事をした。モルドウの水面には、水鳥が泳ぎ、絶え間なく船が往来していた。
彼らとは、今日でお別れ。ポーリンは夜、パベルが乗って来た車でブルーノに帰り、パベルは仕事で、明日早朝の飛行機でチェコの東方の町オストラバに向かうという。お別れに二人で写真を撮った。