リモネーゼとクネーゼ


 リモネット村にほとんど毎年滞在するようになって、もう7年以上もたった。
 リモネット村というのは、イタリア・フランス国境の僻村である。ここで、その地理というか位置を説明してみよう。
 PMN-Mappa.png イタリアの長靴の付け根、地中海に面した都市ジェノバの西方約200キロ、トリノの南方約100キロのところに、イタリア・ピエモンテ洲クーネオ県の県都クーネオ(Cuneo)がある。

 limonePiemonteMap.jpg クーネオから真南へ向かうと国境のテンダ峠トンネルを過ぎ100キロすこしで、コート・ダジュール(紺碧海岸)の海岸線に達し、モナコやモンテ・カルロがある。ここから西に30キロたらず海岸線を辿ると、南フランス・プロバンスの名高いリゾート、ニースに達する。

 さて、クーネオの町は、南から西にぐるりと山々に取り巻かれており、この標高2000mから3000mの国境山脈は、北に連なりモンブランやマッターホルンに繋がる。
 DSC00410_1.JPG ところで、このクーネオから南の国境稜線の山に向かって27キロ走ったところにあるのが、有名リゾートのリモーネ・ピエモンテ (Limone Piemont)で、冬はスキー客、夏は避暑客で賑わう。

 リモーネ・ピエモンテの町からさらに南へ国境の山に向かって、「日光いろは坂」よりもっときついヘヤピンカーブの連続を登った辺りから右に別れて1キロばかり走った所にあるのがリモネット村である。たぶん、テンダトンネルが開通するまで、フランスからの旧道は旧峠を越えてこの村を経由していたと思われる。しかし開通後は、袋小路の村となってしまったようである。
 どんずまりには、国境の山の山腹に開けたリモネット・スキー場があって、リモーネ・ピエモンテスキー場にも繋がっている。
 
リモーネバザール.jpg リモーネ・ピエモンテの地の人は、自分たちのことをリモネーゼと呼んでいる。まあいってみれば「リモーネ人」で、イタリア人ではなくリモーネ人だというのである。クーネオの人たちは、同じように自分たちのことを「クネーゼ」クーネオ人と呼ぶ。
 ここの住人は、ほとんどみんなフランス語を話すし、イタリア語もピエモンテ訛りと呼ばれるフランス語のような訛りがあるといわれる。

 このようなことは、ピエモンテに限らず、世界各地にあるようだ。
 たとえば、アメリカ東海岸のボストンでは、「俺たちはアメリカ人ではなくボストン人(ボストニアン)だ」という言葉を何度も聞いた。京都では、京都弁があり京都人というのが存在する。

 当地で経験したいろいろの話を、日本人でイタリアに留学していたり、イタリアに詳しい人達にしにした時に、一様に聞いた言葉は、「信じられない。とてもイタリアの話とは思えない。それはイタリア人ではないよ」というものだった。
 やはり、ピエモンテ洲のクーネオやリモーネ・ピエモンテあるいはリモネットは、極めて特殊な場所なのかもしれない。

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